料理屋のテークアウト弁当で、もっとも気に入っているのが、貫路のテークアウト弁当である。
料理屋の弁当らしい弁当である。
普段は作らないが、コロナ対応で、店を閉めている間、テークアウト弁当を作っていた。
店を閉めると言うことは、大変なことだったのだろう。
テークアウト弁当を取りに行くたび、「ありがとうございます」と心からの謝意を表してくれていた。
意気に感じる大将である。
美味しいのはもちろん、私もそれに呼応して、少しでも助けになればと弁当を頼んでいた。
その時以来のお付き合いである。
コロナが一段落し、通常営業に戻っても、頼めば、余程忙しくない限り、無理してでも作ってくれる。
今月は、3回テークアウトした。
1回目の弁当

2回目の弁当

3回目の弁当

写真ではわかりにくいと思うが、全く同じ内容ではなく、都度、できる限り、変える工夫をしてくれているのが嬉しい。
メインは最初が鮎、2回目がキノコをサンマでまいた料理と鶏の唐揚げ、3回目もサンマと鶏の唐揚げであるが、ご飯が鰺の巻き寿司。
そして、この時期、美味しいのが栗の天ぷらである。
甘い味付けで、ほのかに良い香りがするのは天ぷら油の香りだと思う。
何の油かわからないが、普通のサラダ油やごま油ではなさそうだ。
取りに行くたび、必ず、「同じようなものばかりで済みません」と言う奥ゆかしさ。
私がこの店を気に入っているもう一つの理由は、料理屋の基本姿勢を保っているからである。
弁当の器にプラ容器は使わない。
それなりの容器に料理を盛り、きちんと店の名前入りの紙でくるんでいる。

それを店の名前入りの紙袋に入れてくれる。
料理屋の弁当は美味しいだけではダメだと思う。
客に手渡す時、しつらえを揃え、渡すことで、初めて美味しい弁当と言えるのではないだろうか。
私のつまらないこだわりに過ぎないが、安い弁当でも、その姿勢を崩さない大将だからこそ、弁当を頼むし、店に食べにも行っている。
それに比べ、コロナでテークアウト弁当を始めた料理屋は多いが、多くはケバケバしいプラ容器を輪ゴムで止め、白いビニール袋に入れている。
このような料理屋は、私の食に対する価値感に反している。
もちろん、そういう料理屋には二度と近寄らない。
食は味だけではないことを痛感するのである。
